以下の画像は、東京電気管理技術者協会(編集)『高圧受電設備の保守管理』からの抜粋です。

 

 

電気管理技術者を目指すみなさんには釈迦に説法ですが、私が開業間もない頃この『対地静電容量が大きい線路ほどV0が出にくい」に悩みました。初めて新設の事業場を受 託した時、電力から送られてきた高圧受電設備チェックシートを見たとき線路V0が2%未満だと記載されていたからです。選定されていたエナジーサポート製 PASの最低タップは2.5%ですから、最低タップに合わせても線路状況に対応できません。戸上製PASは2%タップがありますが、それでも対応できない。サラリーマン時代の事業場は方向性のないPASでしたし、V0が低い線路は都会の話だとの思いもありましたので、現実を突きつけられた時はショックでした。

ZPD(ZVT)でV0を取り出す以上2%を下回る精度で検出できるPAS(SOG)は存在しません。電力のようにGPT(接地変圧器)では大掛かり&高価となるためですが、これは高抵抗地絡時には構内PASが動作せず波及事故になる恐れがある事を意味します。

電線路の地中化が進んでいるため、全国的にV0の低い配電線路は増える傾向にあります。

方向無しにすれば「もらい事故」の恐れもありますし、電力に問い合わせても「お客様で対応願います。」と通り一辺倒の回答が得られるだけでほとほと困りました。

ただ今は、

①高抵抗地絡の継続は可能性として低い(電力の再送電が成功すれば波及事故とならない)。

②事故時の発生零相電圧は電力の記録に残るため、制御センターにその値を問い合わせ、電力会社と話し合いをする。


以上の2点から現在ではそれほど心配はしていません。ケーブル長と太さから方向性を選定するかギリギリのラインであれば、お客様にもらい事故よりも波及事故のリスクの方が大きい事を説明し、理解していただくようにしています。方向無しを選定できた場合、変電所の64と協調が取れる範囲で動作電流値を高いタップに合わせる事でもらい事故のリスクを軽減するのもひとつの方法です。